地球の自転軸が歳差運動をしていることは古くから知られている。つまり、黄道面に垂直な線、すなわち太陽の周りを回る地球の公転軌道を含む平面に垂直な線の周りを自転軸が回転している。古代ギリシャの天文学者ヒッパルコスは、軸の年間角度変位は約45''(秒角)であると結論づけたが、これは回転軸の歳差運動の周期が29000年程度であることを意味する。現代の測定によると、その周期は約25800年である。この問題では、ニュートン力学を使ってこの現象を調べることが求められる。
以下の定数を用いてよい:
地球が非球形であるため、太陽と月が地球にゼロでないトルクを与え、自転軸の歳差運動が生じる。地球が非球形である主な理由は、地球の自転による遠心力である。地球の表面にある地殻プレートは、数百万年かけて変形し、地殻プレート内の応力を最小限に抑えている。したがって、近似的に、地球を遠心力と重力によって形状が決まる一様な密度の大きな液滴としてモデル化してみよう。このモデルでは、地球の表面は、極半径$R_p$ 、赤道半径$R_e$ (図A.1参照)を特徴とする扁球(回転楕円体)である。
地球の赤道半径と極半径の差$h_\textrm{max}=R_e-R_p $ は、平均半径$R=(R_e+R_p)/2$ よりもはるかに小さい。無次元係数を別にして、$h_\textrm{max}$ の値は、地球の自転角速度$\omega$ 、質量$M_E$ 、平均半径$R$ で次のように表すことができる。
$$h_\textrm{max}\propto G^{-1} \omega^\beta M_E^\gamma R^\delta,$$
ここで、$G$ は重力定数、$\beta$ 、$\gamma$ 、$\delta$ は定数指数である。
A.2.で$h_{\textrm{max}}$ を計算できたかどうかにかかわらず、以下の問題では経験値$h_{\textrm{max}}=21~\textrm{km}$ を使用せよ。
なぜ太陽が(地球の中心に対して)ゼロでないトルクを地球に及ぼすのか、下の図B.1で考えてみよう。太陽からの距離の違いによって、重力$F_1$ はその相方$F_2$ よりも大きくなる。
地球に作用するこのトルクの大きさは、1年の間に連続的に変化する。図B.1に示す位置でトルクは最大となり、その4分の1年後には対称性のためトルクはゼロとなる。半年後、トルクは再び最大になり、4分の3年後、再びゼロになる。軸歳差運動の周期は1年よりもはるかに大きいので、この時間依存トルクは1年間の平均値でよく近似できる。
太陽が地球に及ぼす平均トルクを計算するには、まず、地球近傍で太陽によって生成される重力場の時間平均を求めよう。この平均は、質量が太陽の質量に等しく($M_S$ )、半径が太陽と地球の平均距離($d_{SE}$ )に等しい、一様密度の質量リング、太陽リングの重力場として計算できる(図B.2参照)。
円筒座標系の原点を地球の中心とし、$z$ の軸を黄道面(すなわち太陽リングの平面)に垂直とする。地球の自転軸は、$z$ 軸と$\alpha=23.5^\circ$ の角度をなす。
$d_{SE}$, 座標$z$ で書け。$\vert z \vert \ll d_{SE}$ を仮定する。
ここでは、簡単のため、地球を均質な質量分布を持つ剛体と考える。回転楕円体は、地球の赤道半径$R_e$ を持つ球体から余分な部分を取り除いたものとして想像できることを考慮に入れよう(図C.1参照)。
余剰領域に作用するトルクは、極直径の端点$A$ と$B$ に配置された、それぞれ$2m/5$ に等しい質量を持つ2つの点質量に作用するトルクと等価であることを示すことができる(図C.1参照)。
地球の自転軸は、$z$ の軸の周りを非常にゆっくりと円錐運動をしている。つまり、歳差運動である。
パートDで得られた値は、観測値よりもはるかに大きい。その理由は、これまでのところ、太陽が及ぼすトルクだけを考え、月の影響を無視してきたからである。以下の計算では、月の軌道が黄道面にあり、地球を回る月の軌道が半径$d_{ME}$ の円であると仮定する。月の質量を$M_M$ とし、この修正モデルにおける歳差運動の周期を$T_2$ とする。