Logo
Logo

構造化ターゲットおよび動的ターゲットによるX線の回折(10点)

1. ベクトルは太字の記号で表される (例: r, q )。


2. 吸収を無視し、電場が入射面に対して垂直に偏光していると仮定する。

X線回折パターンは、結晶内の無数の微小な「波源」が干渉することによって生じ、これらは正しい位相で複素振幅を足し合わせることで予測することができる。(実数)振幅 $A\ge0$ および位相 $\phi$ によって特徴づけられる単色波を考えてみよう。複素振幅 $\tilde{A}$ を次のように定義する。

$$\tilde{A} = A e^{i\phi},$$

したがって、波の(実)振幅は $\tilde{A}$ の絶対値となり、$\phi$ はその位相となる。したがって、$\tilde{A}$は、振幅と位相の両方を1つの複素数で便利に表現している。この問題では、複素振幅の二乗を無次元強度として定義する:

$$I = |\tilde{A}|^2 = A^2.$$

検出器の感度、入射ビームの規格化、および一般的な伝搬係数といった、一般的な実験的および幾何学的比例定数は、この定義に組み込まれている。対照的に、単一電子散乱振幅$f_0$ は、一点電子からの散乱における振幅スケールとして明示的に保持される。

結晶性物質に入射波が当たると、その波は結晶格子によって回折され、回折された各波が互いに干渉し合う。その結果生じる回折波の強度は、個々の回折波の複素振幅を、それらの位相差を考慮して加算し、その結果得られる総複素振幅の絶対値の二乗を計算することで求めることができる。回折は主に電子との相互作用によって生じ、原子核などのより重い粒子による寄与は通常、無視できる程度である。単一の点電子によって回折される波の振幅は、電子から検出器までの距離 $R = |\mathbf{R}|$ のみに依存する。$R $は試料の寸法よりもはるかに大きいため、試料全体にわたるその変動は無視できる。したがって、個々の回折波の振幅は一定であると仮定しつつ、個々の回折波間の位相差を適切に考慮することで、総回折波を正確に決定することができる。

$\mathbf{k}_i$ および $\mathbf{k}_f$ を、それぞれ入射波と回折波の波数ベクトルとする。波数 $\mathbf{k}_i$ を持つ入射平面波は、波数 $\mathbf{k}_f$となる波へと回折される。運動量移動は次のように定義される

$$\mathbf{q} = \mathbf{k}_f - \mathbf{k}_i$$

また、波長は変わらないため、それらの振幅は等しいと仮定される:

$$\mathit{k}\equiv|\mathbf{k}_i| = |\mathbf{k}_f| = \frac{2\pi}{\lambda}.$$

Part A:点粒子とみなした2つの電子による回折

位置 $\mathbf{r}_1$ および $\mathbf{r}_2$ にある2つの点電子を考え、 そして、$\mathbf{r}\equiv \mathbf{r}_2-\mathbf{r}_1$と定義する。検出器は $\mathbf{P}$ に配置され、$\mathbf{R}\equiv \mathbf{P}-\mathbf{r}_1$ を定義する。平面波 $E_i(\mathbf{r})\propto e^{i\mathbf{k}_i\cdot\mathbf{r}}$が2つの電子に入射し、 そして、回折波は方向 $\mathbf{k}_f$に沿った遠方領域で観測される。Part A では、相対的な空間位相のみが関連するため、共通の時間依存因子 $e^{-i\omega t}$ は記述しない。

A1  0.60 遠方近似, $R\equiv|\mathbf R|\gg|\mathbf r|$, で $ |\mathbf r|/R$ に関する最低次を残し、幾何学的な経路差, $\Delta L_{\rm out}\equiv |\mathbf{P}-\mathbf{r}_1|-|\mathbf{P}-\mathbf{r}_2|$, を $\mathbf r$ と $\mathbf k_f$, あるいは同等な $\mathbf k_f/k_f$を用いて表せ。

A2  0.40 A.1 の結果を用い、$\mathbf{r}_1$ と $\mathbf{r}_2$における入射波の位置依存位相を考慮し、検出器における2つの回折からの寄与の位相差を $\mathbf{q}$ と $\mathbf{r}$で表せ。位相差は $\Delta\phi\equiv\phi_1-\phi_2$ で定義される。ここで $\phi_1$ と $\phi_2$ は、$r_1$ と $r_2$における電子からの寄与の位相である。

A3  0.60 これら2つの電子から生じる回折波の総複素振幅を $\mathbf{q}$ と $\mathbf{r}$で表せ。 全体の位相因子は、強度に影響を与えないため、無視してよい。単一の点電子から生じる回折波の実部振幅は、位置に依存しない定数 $f_0$ であると仮定する。

A4  0.40 これら2つの電子から生じる回折波の強度を、$\mathbf{q}$ および $\mathbf{r}$ を用いて表せ。

Part B:有限の縦方向コヒーレンス(位相ジャンプモデル)

位置 $\mathbf{r}_1$ および $\mathbf{r}_2$ にある2つの点状電子を考え、 ここで、$\mathbf{r}\equiv \mathbf{r}_2-\mathbf{r}_1$とする。波長 $\lambda_0$(したがって $k=2\pi/\lambda_0$ および $\omega=2\pi c/\lambda_0$)のビームが電子を照射し、回折波は$\mathbf{k}_f$に沿った遠方で観測される。入射場を、時間依存のランダム位相を持つ平面波

$$E_i(\mathbf{r},t)=A\,\exp\!\left[i\left(\mathbf{k}_i\!\cdot\!\mathbf{r}-\omega t+\phi(t)\right)\right],$$

としてモデル化する。ここで、$\phi(t)$ は 区間ごとに定数 であり、持続時間が

$$t_0 \equiv \frac{L_0}{c},$$

の等間隔でランダムな位相ジャンプを起こす。(与えられた)縦方向のコヒーレンス長 $L_0$ を用いている。$t_0$の各区間の開始時点において、$\phi(t)$ is は $[0,2\pi)$上で一様分布する新しい独立な値にリセットされる。 $I_0$ を、同じ幾何学的配置における単一の電子から得られる(時間平均化された)検出器での強度とする。この問題では、検出器は時間平均の強度を測定するものとする。すなわち、個々のランダムな位相ジャンプを記録しない。位相ジャンプの間隔 $t_0$ よりもはるかに長い時間で瞬時強度の平均$\langle I\rangle_t\equiv\langle|E(t)|^2\text{ }\rangle_t$ を記録する。ここで $\langle \cdots \rangle_t$ は多くの位相ジャンプ間隔に関する平均を表す。

B1  2.30 上記の位相ジャンプモデルを用いて、2つの電子による検出器での時間平均総強度$\langle I\rangle_t$を導出せよ。最終的な結果は、$I_0,\:$$\mathbf{q}\equiv \mathbf{k}_f-\mathbf{k}_i$、分離ベクトル $\mathbf{r}$、 波長 $\lambda_0$、およびコヒーレンス長 $L_0$で表せ。検出器の平均は$t_0$ より十分に長い時間についてとる。

Part C:非点源粒子の影響

電子はしばしば古典的な点粒子として扱われるが、より現実的なモデルでは、その電荷は有限の空間領域に分布していると見なすことができる。2つの理想化された電荷分布を考えてみよう:

ここで $r = |\mathbf{r}|$ であり、 $\delta^{(3)}(\mathbf{r})$ は $r = 0$ 以外では0となり $\int \delta^{(3)}(\mathbf{r})\,d^3r =1$ である3次元ディラック・デルタ関数である。 定数 $Q_0$ と $\rho_0$ は、2つの場合に全電荷が等しくなるように選ばれる。

$$\int \rho_1(\mathbf{r})\,d^3r = \int \rho_2(\mathbf{r})\,d^3r = Q_0.$$

ここで $d^3 r$ は3次元空間の体積要素を表す。デカルト座標系において $d^3r=dxdydz$ と $\int_{\mathbb R^3}$は全空間における積分を意味する。 有用な恒等式(証明なしで使用可能):

$$\int_{0}^{\infty} e^{-r^{2}/R_0^{2}}\,4\pi r^{2}\,dr=\pi^{3/2}R_0^{3}, \int_{\mathbb{R}^3} e^{-\alpha r^2}e^{i\mathbf{k}\cdot\mathbf{r}}\, d^3\mathbf r = \left(\frac{\pi}{\alpha}\right)^{3/2} \exp\!\left(-\frac{k^2}{4\alpha}\right), \qquad \alpha>0.$$

C1  0.40 $Q_0$, $\rho_0$ および $R_0$ との間の関係を求めよ。

C2  0.40 次の振幅を評価せよ。

$$A_2(\mathbf q)\equiv \int_{\mathbb R^3}\rho_2(\mathbf r)e^{i\mathbf q\cdot\mathbf r}\,d^3\mathbf r$$
そして、点電荷の振幅 $A_1(\mathbf q)=Q_0$と比較せよ。

C3  0.20 $q = \dfrac{2}{R_0}$のとき、これら2つの理想化されたケースにおける回折強度の比、$\dfrac{I_2}{I_1}$を求めよ。

Part D:表面形状が平坦でないフィルムからの回折

薄膜の表面(すなわち、最上層の原子層)が完全に平坦ではなく、表面粗さを有していると仮定する。一般的なモデルでは、局所的な薄膜の厚さ(単分子層で測定)がガウス分布に従うと仮定する。$N$ を、ビームの横方向のコヒーレンス領域内における局所的な完成単分子層の数と定義する。$N$は表面全体で変化し、平均 $\bar N$、標準偏差 $\sigma$(いずれも単層単位)を持つ正規分布に従うと仮定する:

$$P(N)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma} \exp\!\left[-\frac{(N-\bar N)^2}{2\sigma^2}\right].$$

(平均値を評価する目的で、$N$を連続変数として扱うことができる。)隣接する原子層(単層)間の間隔を$d$とし、 また、$q_z$を、散乱ベクトル$\mathbf q=\mathbf k_f-\mathbf k_i$の、薄膜の平坦な表面に垂直な成分とする。すなわち、$q_z=\mathbf q\cdot\hat{\mathbf z}$である。単分子層の数が整数である場合 $N$、散乱振幅は

$$A_N(q_z)=\sum_{n=0}^{N-1} e^{iq_znd} =\frac{1-e^{iq_zNd}}{1-e^{iq_zd}}.$$

となる。ガウス厚さ分布の平均を求める際、$N$を連続変数として扱い、連続拡張に対応した、次の閉じた形式の式を用いる。

$$A_N(q_z)\equiv \frac{1-e^{iq_zNd}}{1-e^{iq_zd}}$$

測定された回折強度は、コヒーレント平均振幅から得られるものと仮定する。

$$I(q_z)\equiv \bigl|\langle A(q_z)\rangle\bigr|^2, \qquad \langle A(q_z)\rangle=\int_{-\infty}^{\infty} P(N)\,A_N(q_z)\,dN.$$

D1  2.40 強度比

$$\frac{I(q_z,\sigma=0.4,\bar N=5)}{I(q_z,\sigma=0,\bar N=5)}$$
を,

$$q_z=\frac{\pi}{2d} \qquad\text{および}\qquad q_z=\frac{2\pi}{d}$$
の場合に評価せよ。必要に応じて、適切な極限をとることで、2番目の場合を評価せよ。

Part E:表面形態が変化するフィルムからの回折

基板上に、層ごとに成長させる方式、すなわち、次の単分子層の成長を開始する前に、その前の単分子層の成長を完了させる方式で、単純立方格子構造を持つ薄膜が形成されると想像してみてみよう。 $d$ を最近接の原子層(単層)の間隔、$q_z$ を $\mathbf{q}=\mathbf{k}_f-\mathbf{k}_i$ のフィルムの表面に垂直な成分、すなわち $q_z=\textbf{q}\cdot\hat{\textbf{z}}$ とする。フィルムが成長するとき、フィルムの厚さは変化して、$\textbf{q}=\dfrac{\pi}{d}\hat{\textbf{z}}$. における回折強度が変化する。計算は、指定された面外方向の運動量移動量で行われ、すべての単分子層の寄与がコヒーレントに合算される。

E1  2.30 膜の成長が $t = 0$ で始まり、1単層を形成するのに必要な時間が $t_0$ である場合、$\textbf{q}=\dfrac{\pi}{d}\hat{\textbf{z}}$ で測定された回折強度の比を求めよ

$$\frac{I(t = 0.8 t_0)}{I(t = 3.6 t_0)}$$
各単層成長期間において、最上層の被覆率が0から1まで直線的に増加すると仮定する。従って 、時刻 $t=(N+\theta)t_0$ では $N$ の単層があり、次の単層では被覆率 $\theta$ となる。